Eマウント85mmに現れた伏兵|atx-m 85mm f1.8 feレビュー

昨年の今頃『85mmいらね』ってsel85f18を売っぱらって、やっぱ85mmってイイよね!って思いなおし、この度新たにatx-m85mm f1.8を購入しました。

同じ85㎜ではあれど、売ったものと今手元にあるものが違うのにはそれなりに理由があるので、そのあたりのことを交えて感想などを。

世の情勢が情勢なのでほとんど持ち出すことができていませんので、同じような場面の作例が続くので参考になるかどうか。

トキナーを選んだ理由

GMクラスを除いたFEレンズ85mmの選択。ほぼsel85f18で決まりみたいな風潮…あると思います。

手ごろな価格に優れたシャープネスと高速AF。程よいサイズ感と機能性&純正の安心感もあって『そりゃ売れるわな』が詰まった85mmのファーストチョイス的なやつ。

そんな絶対的エースの前に送り込まれたのが、今回紹介するTokina atx-m 85mm F1.8 FE。

しかしスペックを比較すればするほど、どうにも当て馬感がぬえないのも事実。

価格もほぼ変わらない(何ならキャッシュバック中なら純正のほうが安いくらい)し、スペック的にもAFの信頼性だとか、大きさ重さ、防塵防滴仕様フォーカスホールドボタンの有無だとか機能性においても明らかに純正にアドバンテージがある。

▲85mmは手元にないからfe55mmとの比較

特に顕著なのは重量の違いで、トキナーが645gに対し純正は371g。85mm f1.8としては明らかにオーバーサイズの大きさ。

正直言ってこのスペック差でほぼ同価格帯で売りだすのもどうなの?とも思うし、そもそもトキナーさん売る気あんの?とも思ってしまう。

一見こちらが心配になるほど、勝ち目のない戦いに挑んでいるようにしか見えないけれど…

でも、絶対的エースにも弱点はあるんだぜ。

sel85f18の口径食

sel85f18は1年ほど前に購入したものの、わずか2ヵ月程で手放してしまいました。これは個人的な最短記録で、ここまでの短期間で手放した機材ははじめて。

理由は口径食ですね。

中心から少し外れると玉ボケはレモンになって、ぐるぐるボケも目立つ。後ボケもなんだか騒がしくて、個人的な印象はやたらシャープに写るオールドレンズみたいな感じ。

▲sel85f18で撮影

それまではあまりボケ描写だとかにこだわったこともないし、そもそもよく分からないって言うのがホントのところ(今でもあまり分かってない)だったのですが、それでもsel85f18に関しては素人目にも『ちょっとね…』ってな写り。

写り自体はかなりシャープな描写で、解像度という部分にフィーチャーすればハイエンドレンズにも匹敵するポテンシャルを感じることができたのですが、とにもかくにも口径食が残念。

この辺りはやはり値段なりの描写で、ネット界隈で言われている”神レンズ”みたいな評価には首をかしげるばかり。

強みはボケ描写

そして今回カタログスペック的にいまいちストロングポイントの見えてこないトキナーを選んだ理由は、この価格帯のレンズとして異様にまでこだわったボケ描写に期待したから。

公式サイトでは

“高コントラストとアウトフォーカス時の綺麗なボケ味”

っていう売り文句でその性能をアピール。公式レビューでもボケ味に対する並々ならぬ自信が伝わってきます。

sel85f18の口径食に嫌気をさしたこともあって、そこまで言うのならトキナーの心意気を買ってみたい。

ほぼ間違いなくViltroxのOEMなんだけど。

使用感

さよなら口径食

口径食が気にならないという人はいても、”あった方がいい”なんて思う人はほとんどいないんじゃないかと勝手に思っています。

カメラ女子にヘリオスがウケてる現実をみると、正直言って全く自信はないけれど。

▲F1.8

とにかくその一般的に良しとされていない憎っくき口径食を、徹底的に排除したのがこのレンズの特徴。 実際どの程度のものかといえば、全く無いとまでは言わないけれど、ほぼ意識しなくても良いくらいのレベルにまで抑えられています。

開放で端の方まで、ほぼ円形が維持されてるのは結構すごい。

▲これも開放 割と隅まで丸い

口径食が少ないことはグルグルボケの抑制にもなるので、このあたりはsel85f18に対しての明確なアドバンテージ。

大口径レンズに口径食はつきものだけど、これだけ抑えられているのは、スペックに対して64mmという大げさな前玉サイズが一役買ってるのは間違いなさそう。

口径食は結局のところ簡単に言えばケラレみたいなものなので、じゃあ物理的にでかくして解決してやろうっていう方法にはロマンを感じずにはいられない。

▲頭ブロッコリー

もちろん無意味にデカいわけじゃないんだけど、純正がためらわれるような設計を迷わずやっちゃう中華的な強みがそのまんま思想として出てるのが面白いなぁと。

と、ごちゃごちゃと言ってきましたが、とにかく開放から口径食を気にすることなく使えるのはメリットしかない。

シャープさとボケの両立

85mm単焦点レンズはその特徴からして、絵的にピントがあっている部分よりもピントがあっていない”デフォーカス”の部分が大半を占めることが多いはず。

そうなってくるとこの辺りの焦点距離のレンズに求められるものは”ボケ質の良し悪し”で、その質の差が良いレンズと凡庸なレンズを分けるものなんじゃないかと感じています。

しかし、昨今のレンズ評価はシャープネス一辺倒なところがあって、それによってボケ質が犠牲になることが少なくなかったりするようで。

結局レモンボケも周辺画質の確保のため、光線を絞られていることから起きてるわけだし(ですよね?)。

安いレンズはそうして口径食を利用してシャープネスだけ上げておけば、勝手に”神レンズ”なんて持ち上げてもらえるからその傾向は尚更のこと。

▲F2.8 ちょっと絞って

もちろんGMだとかのハイグレードなレンズは、Ff値的なヒエラルキーがあるにせよ、シャープネスとボケ質が両立されているからこそ価値がありそれなりの価格にもなるんだと思います。

だから”シャープネスとボケ質を両立した上等な描写”なんてものは本来は高価なレンズでしか味わえないものなはず… だと思っていたんだど。

やるじゃんトキナー(たぶんViltrox)

まさかこの価格で!中華レンズが!やってしまうとは!という驚き。

シャープネスに関しては手持ちがα7Ⅲだからより高画素の機種でどうなるのかは分からないけれど、少なくとも2400万画素なら絞り開放から文句のない描写。

だからと言って過剰にシャープって訳でもなくて、必要十分な解像って感じ。

中景、遠景は開放から四隅まで十分解像してて、近接は少しは滲むようなところが味付けとして好ましく感じます。

んで、先述したように口径食も少なくて、背景もグルグルしないから真っ直ぐ素直にトロけるボケ質が素敵。 フリンジは普通に出るけれどごく普通の範疇なので取り立ててどうってこともない。

メーカーがポートレートレンズと謳っているのも納得で、ほぼ子ども撮りの自分にはぴったり。

ちゃんとシャープでボケもきれい。

この価格帯でそれを実現してるのってすごいことなんですよね?

少なくとも自分にとってはsel85f18よりも間違いなく好みの描写なので、それだけで十分価値がある。しかもこの価格帯で手に入るっていうのは、自分のようなサンデーカメラマンにとっては本当にありがたい。

ありがたい。

だから最初に、たいして安くもないとか言ってゴメンなさい。

今はむしろ安すぎるって思うくらいには改心しましたので。許してほしい。

重いは重い…でも納得できる重さ

正直、価格から言えば驚きの描写なのですが、それと引き換えに犠牲になったのは見ての通りの大きさと重さ。

特に純正の倍近い重量をどう考えるか、このレンズを選ぶかの分水嶺かと。

とはいえ85mmf1.8としては大きいかなってだけで、レンズ全体に目を向けて考えればそれほど騒ぎ立てるほどでもないし、個人的には納得できる重さ。

SIGMAで一度懲りてて最近は省エネ思考だから、許容範囲ギリギリのところだけど。

『描写or重さ』

そのトレードオフをユーザーが選べるのはレンズが豊富なEマウントのメリットなので、選択肢が多いことは純粋に喜ばしいことかと。

AFも速いよ

絶対的な性能は純正に敵わないとは思うものの、必要十分な速度。

必要十分っていう表現もなんだか濁してるような言い方だけど、本当に普段使いには全く問題のない速度で、厳しい条件 (近距離で高速移動するものだとか)を切り詰めていけば純正に利があるかなって程度の違い。

厳密に比較したわけじゃないけど。そんな印象ってことで。

走ってる子どもくらいなら余裕で追従。瞳AFの動作も問題なしで、精度もバッチリ。

正直思っていたよりも良好だったので、そこは一安心。

問題点

不可解なAF挙動

性能と価格のバランスを思えばもっと売れてもいいんじゃないの?ってな具合で満足しているんだけど、ひとつだけどうにも看過できない問題に直面しました。

このレンズを使用中突然AFが不可解な挙動をし、正常に復帰するためにはカメラの電源を切るしかない状態に遭遇しました。

症状としては

  • 1.フォーカスモードをDMFに設定すると、ピントリングに触れていなくても勝手に画面が拡大されてしまう。
  • 2.フォーカスモードAF-C使用中、勝手にAF-Sの挙動に切り替わってしまう。(設定を確認してもAF-Cがセットされたまま)
  • 3.シャッターボタンを押してもAF、その他すべての操作が反応しなくなる。電源を落とすしか復帰方法がない。
  • 4.不具合が発生し電源を落とすと、設定が不具合発生前の設定に戻ってしまう。(F値やISO、フォーカスエリア、フォーカスモードなどすべて)

これ、購入したその日にはじめて使用し、わずか1時間くらいの間に起きたことなんですよね。

これじゃあ使い物にならんと思い、すぐさま購入したケンコートキナー楽天市場店サポートに連絡。上記のような症状を伝えた後、数日後”不具合”との報告を受け、結局レンズを返品することになりました。

なので実は今手元にあるレンズは2本目。つまり買いなおしたってことです。

最初は同様の症状を危惧し買いなおす事は躊躇したですが、やっと巡り合えた理想のレンズ。描写のすばらしさを諦めきれず、1本目は『個体の問題だよなきっと』と自分に言い聞かせ今度はマップカメラで購入しました。

結論からいえば2本目も全く同様の症状が発生。ちなみにボディのファームウェアは最新の状態です。

今度はケンコー・トキナーのサポートに直接問い合わせたのですが、そのような症状は認知していないとのこと。なので「ファームウェアによる対策も特に考えていない」となんとも素っ気ない返答。

しかし少なくとも自分だけでも2本のレンズで起きている症状で、アマゾンレビューや海外レビューでも指摘があがっていることは確認できてるんですよね。

それに今回メーカーに直接問い合わせた際、名乗ったわけではないので1本目の不具合で問い合わせた症状については社内で共有されているわけではなさそう。

とりあえず確認するからレンズを送ってくれとは言われましたので、どうしたものか思案中。タイミングを見て一度みてもらおうとは思っていますが。

せっかくいいいレンズなのにこういう問題があると、人に勧めづらくなるのでもったいないとしか言いようがない。

まとめ

不具合さえなければ…という惜しい気持ちはありつつも描写性能にはかなり満足しています。

しっかりした写りでボケもきれいだし、AFも早くて価格もリーズナブル。個人的にはほぼ不満らしい不満はありません。

重さに関しては個人差も大きいのでそれぞれ許容範囲も違うとは思うのですが、それほど無理のあるサイズでもないので。そこさえ乗り越えられればかなりコストパフォーマンスに優れたモデルだと感じます。

ボケ描写にはこだわるけれど、GMやBatisは高い、シグマは重すぎる、f1.4までは必要ないって人には良い選択ではないかと。

でもな。不具合さえなければなあ。ファームウェアでなんとかして欲しいな。